紙芝居劇むすび



人のつながりから生まれた紙芝居劇

紙芝居劇むすびについて
石橋友美 紙芝居劇むすびマネージャー

むすびは紙芝居グループですが、厳密に言うと紙芝居を口実に集まっている人たちの団体です。メンバーはおっちゃんたち、ということになっていますが、たくさんの人が日常的に立ち寄ったり、立ち寄りたいと思ってくれていたり、心を共にしてくださっていると思っています。そうした人たちも含んだ「むすび」です。

場所は無料で貸していただいているし、事務所にはパソコンもなければ、水道さえない。私もマネージャーとはいえ、むすびで十分な日当がでるわけもなく、他の生業を持ちながら、週3日程度顔を出すパートタイムマネージャー。むすびは吹けば飛ぶような脆弱な体制で運営されています。あとは紙芝居の公演料やカンパで成り立っています。

紙芝居をする楽しいおじさんたちの魅力にハマってしまった人たちは、人生の先輩たちから生きる力をもらいます。本当のステージは紙芝居の前後にある人と人との交流の中にあるようで、やはり紙芝居は「口実」でしかないような気がしています。
むすびの強みは、弱いが故の強さ、それは助けてもらわないと成り立たない、自給自足するのではなく、あちこちの力を分けてもらいながら存在できるありがたみ。自分のおじいちゃんに会いに行くのに、「ボランティアにいく」とは思わないのと一緒で、「どうしてるかな。会いに行きたい」と思わせる強みなのかもしれません。

事務所であるエッグスは不定期に開き(基本的に火曜日と木曜日の午後の早いうちは開いています)、紙芝居公演は年間30~40回と忙しく、エッグスには毎日のように誰かが訪れます。おじさんたちの楽しみはとにかく「今日はどんな人に会えるんだろう」というワクワク感。生きている限り人は自分を成長させて、夢をもったり実現させることができるべき、冥土の土産は多い方がいい、というのが私の思いです。幸せなお年寄りの笑顔は、人生の後輩たちにどれだけ希望をもたらすか、紙芝居の後ろから客席を見ていて、強く感じます。おっちゃんたちが光を放つ紙芝居をぜひ一度ご覧ください。


誕生
紙芝居劇むすびのスタートは2003年頃に活動していたNPO法人「かまなび」の「ごえん」というグループがきっかけとなります。野宿から畳に上がった生活保護受給者のおじさんたちの生きがいサポートをする同NPOが自然発生的にはじめた紙芝居活動でしたが、紙芝居に歌が入り、お面をつけ、小道具が飛び出すスタイルはこの頃に形成されました。「かまなび」が解散した2005年、おじさんたちは「紙芝居を続けたい」「できれば自分たちで運営したい」と「むすび」に改名、再出発を果たしました。「NPO法人こえとことばとこころの部屋」が「むすびプロジェクト」を設立、支援に乗り出し、他のアーティストとの関わりが生まれました。引き続き事務所を無料で提供してくださった「マンション・フレンド」、むすびの自立宣言を関係者に公表する場を提供してくださった「釜ヶ崎のまち再生フォーラム」など、多くの地元関係者のみなさまがむすびの誕生をあたたかく見守ってくださいました。

おっちゃんたちの紙芝居劇
日本最大の日雇い労働者の寄せ場であるあいりん地区、通称・釜ヶ崎で活動しているグループです。初期のおっちゃんたちはほぼ全員が野宿経験者でしたが、現在は一人暮らしの理由も様々です。日雇い仕事で生きてきた人あり、サラリーマン経験者あり、様々な人生が交差して、おもしろい化学反応を起こします。もはや「むすび」はおっちゃんたちだけのものではない!スタッフや、遊びに来てくれる人、むすびに立ち寄って世間話をしていく人まで、何十人、何百人という人たちが「むすび」の輪を形成しています。

主な活動は紙芝居劇の制作と上演。手づくりで話をつくり絵を描き、保育園やお年寄りの施設などをはじめ、多種多様なイベントに出張公演しています。年間約30回以上の公演、動員数は1000人を超えるようになり、2007年にはイギリス・ロンドン公演、2010年には東京公演も果たしました。演目は「ごえん」時代からの昔話「桃太郎」や「ぶんぶく茶釜」、「むすび」になってからはオリジナル作品も手がけるようになりました。

むすびの紙芝居劇は、伝統スタイルの紙芝居と違い、複数のおじさんたちがそれぞれに役をもって1つの演目を演じます。お面をつけて、小道具や衣装も使って、ときには歌いときには立ち回りもして、観客のみなさんを楽しませようと心を配ります。ほとんどのおじさんが人前で演じる経験はこれまでありませんでしたが、歳を経た身体の動きや声からは、プロでもだせないような不思議な魅力が醸し出されます。その人の生きざま、強烈な個性がにじみでてくるのです。
by musubi-pro | 2005-07-27 00:40 | 紙芝居劇むすびについて
<< むすびへの連絡


西成・釜ヶ崎で紙芝居をするおじさんたちの表現活動